数年前、「鬼から電話」というアプリが流行りました。子どもが言うことを聞かない時に鬼から電話がかかって来て、子どもは怖さで言うことを聞くようになる、というものです。
小さい子どもの子育てをしていると、猫の手でも鬼の手でも借りられるものは借りたい。本当によくわかります。ただ、私はこのアプリはどうも苦手で、自分の子どもに試したことはありません。私の息子は怖がりです。幼稚園にいた頃、「自分の部屋にモンスターがいる」とよく言っていました。その息子に鬼からの電話なんて、ものすごく怖がるのがわかっているから、試すのもかわいそうでした。
公園から家に帰りたくない子どもに、「お母さんもう帰るからね。バイバーイ!」と言って姿を消すと、その子が大泣きして追いかけてくること、ありますよね。お母さんは子どもを置いて帰ろうなんて本当は少しも思っていなくて、ただそういう演技をしただけ。でも、子どもはそれを信じて、一人になったと思い、怖くなってしまう。本当でないことをまともに受け取って、本気で泣く子ども・・・・。私もよくやりましたし、今もやっています。でも、何だか子どもを騙したようで、後味が悪いのです。
そして先の「アプリ」では、騙されるどころか、お話にしか出てこないと思っていた悪い鬼に脅されるわけですから、それは怖いから子どももすぐに言うことを聞きます。即効性があるから、あれほど話題になったのでしょう。
しかし、本来ならば、鬼がやれというから、怖いからやるのではなく、それをやる意味を分かっているから、納得しているからやる、というのが理想です。どうして今家に帰らなければならないのか(晩御飯の時間だから、誰かがお家で待っているから、など)、どうして今歯磨きをしなければならないのか(虫歯にならないように、遅くなると眠たくなってしまうから、など)、できれば子どもには理由がわかった上で行動して欲しいもの。騙しや脅しから、その学びはありません。
食べることに関しても、同じことが言えます。私も食について人とコミュニケーションをする中で、脅すような極端な表現は避けるよう心がけています。即効性はあっても、持続性はないと考えるからです。
私の弟は、5年生の時に担任の先生が「コーラを飲むと歯が溶ける」と言ったのを長らく覚えていました。それを当時聞いた私は、今もそれを覚えています。おそらく、コーラ=砂糖を多く含む=歯に悪い、というのを、子どもにもわかるよう、端的に表現したのだと思います。
また、いつか書いた、皮が焦げたお魚を食べたくないと言った、同じクラスの女の子。泣いて拒否するくらいですから、多分ご両親が、かなりはっきりと「これを食べたら病気になる」と言ったのでしょう。
しかし、本当に歯が溶けるのか、本当に病気になるのか、そうであれば何故なのか、先生やご両親にもう一歩考えを深めていただきたかった。そうしないと、その先生やご両親の発言は、一種の脅しでしかありません。
小さな子どもは親や大人の言うことを信じます。自分にとって衝撃的な内容であれば、尚更です。そして、それは大人が思うよりもずっと長く、記憶に残ります。大人はそれを胸によく留めておきたいものです。
インターネットに存在する情報にも、極端な表現をすることで、サイトの訪問者にその内容をむりやりインプットさせようとするものがあります。○○を食べるとキレる子どもになる、とか、その類のものです。
こういうサイトを見ると、いつも思います。大体、○○を食べても、子どもがすぐに、また絶対にキレる子になるわけではありません。それに第一「キレる」の定義もあいまいです。多くの場合、正しくは、将来的に健康に害を与える可能性があるから、気をつけて利用しましょう、またはできるだけ控えましょう、くらいが適切な表現だったりします。みんなが怖がるような表現をすると、注目度は上がるし、即効性もある。けれど、知識として本当正しいかどうか疑わしく、持続性はありません。
私は子どもたちに、将来、食について正しい選択をするこができるようになって欲しいと思っています。自分が食べる物と自分の健康に責任を持つこと。それを実現するためには、「これを食べる=病気になる」からではなく、なぜ病気になる可能性があるのか、その可能性があるのであれば、他に選択肢はあるのか、を、考え、調べることができるようになって欲しい。信憑性が疑わしい情報があれば、やみくもの信じず、あれっ、と立ち止まってみて欲しい。それはすなわち、「食育」の目的でもあります。
親ができることは、子どもと我慢強く、コミュニケーションをすることだと思います。親が答えを知っている必要はありません。わからなければ、まずは「お母さんも知らないなぁ」、「本当かな」、「どうしてかな」と言う。これもコミュニケーションです。興味があれば、後で調べてみる。その結果をまた伝える。何事も一言で終わらせず、こんなことを繰り返していくことが大切なのかな、と最近考えているのです。
言うはやすく、行うは難し。子育てや食育は「超・長期プロジェクト」です。みんなでゆっくり、ぼちぼち歩いていきましょう!
写真は本文とは関係ありません。先日、どこからかニョッキが話題に出たので、息子と作ってみました。チーズをすりおろす、生地をこねる、転がして細くする、切る、など、6歳男子でもできるプロセスがたくさん。生地も扱いやすいので、子どもとのお料理にぴったりです。
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