みたらし団子の焦げに思う

昨年末、日本に帰省した時のこと。


ある門前町を散歩しました。木造の古い建物。通り沿いの1階の殆どは店舗になっていて、昔からあるであろう呉服屋さんや履物屋さんと並び、素敵なカフェなど、若い人が切り盛りするお店も多くあるようです。


そして、たまたま前を通りかかったお団子屋さん。前日は行列ができていたのに、その日は誰もいない。チャンス!と言うことで早速、私と家族の分のみたらし団子を買いました。もちろん、すぐにパクつきます。


次の瞬間、思わず「苦い!」と口に出してしまいました。お団子をよく見ると、表面が焦げています。子供たちも「苦い~」と言って、食べません。ちょっと焦げ過ぎじゃない、と思ってお店の人に一言言おうと思ったのですが、若いお姉さんが一生懸命お団子を焼いているのを見て、結局何も言えず。私の分に加え、子供たちの分も我慢して食べました。

次の日。同じところを、日本に住んでいる私の弟と通りかかったので、前日の話をしました。そうしたら、弟の一言。「ドイツが長すぎて、焦げの味、忘れちゃったんじゃない?」


・・・・・ 

うぉー、そうかも!そうだそうだ!確かに、その日そこで立ち食いしている人のお団子を見てみると、前日の私のものと同じように焦げている。そしてそれをみんな、とてもおいしそうに食べているのです。

何ともおいしそうなこのみたらし団子の写真は、ある素材サイトから頂いたものですが、このお団子もとてもいい具合に焦げています。


考えてみれば、昔から知っているあのお醤油の焦げる匂いは、いい香りとして、いい思い出と一緒に私の鼻の奥の方に残っています。そんな香りが街に漂わない環境に暮らして、随分と時が経っていたのです。


ご飯のおこげや、焼き魚の皮の香ばしい焦げ。あの「焦げ」をおいしく頂くことも、日本の「食」の一部なのですね。


さて、前置きが長くなりましたが、今回のテーマ。お団子ではなく、BBQの季節の前に、お肉の「焦げ」についてです。


ドイツでは、マリネしたお肉やソーセージを、屋外で、木炭グリルや電気グリルで焼くのが一般的です。


お肉や野菜を焼くための調理方法である「グリル(Grillen)」では、食材を高温で調理することでまずは表面がカリッと固まり、そのため水分が外へ逃げないので、中はジューシーに仕上がります。また、油をひかずに調理でき、余分な脂は落ちるので、ダイエットに向いています。


お肉を焼く時に少し気をつけたいのが、「焼き方」や「焼き過ぎ」です。


お肉から滴り落ちた油で炎が上がることがありますね。この炎が上がっている時や、木炭が完全に燃焼していない状態でお肉を焼くと、ベンゾピレンという物質が作られます。また、保存のために塩で加工されたハムなどを焼くと、ニトロソアミンという物質が形成されます。焦げに含まれる物質が体内で他の物質と結びつくと、発がん性のある物質に変化します。


「焦げを食べるとがんになる」と聞くことがありますが、多くのことがそうであるように、これも程度の問題です。焼き過ぎたところは苦くてまずいので、削いでいただく。食べ過ぎない。極端に走らず、そんな「当たり前」のことをしていけばいいと思います。


実は、お肉と一緒に摂ると、体内で悪い物質が作られるのを抑える働きをする食材もあるんです。それは「フラボノイド」を含むもの。フラボノイドは、お肉に添えるマスタード、マリネに使えるオレガノやローズマリン、サルビア、タイムなどのハーブ、そしてなんとビールの原料となるホップにも含まれています。


BBQをする時には、お肉をマリネして下準備。そしてマスタードも忘れずに!


ま、ビールは言わなくても忘れませんよね。


話は変わりますが、「焦げ」と聞くと思い出す、小学校4年生の時の出来事。その日の給食は焼き魚。皮の焦げ目を見て、ある女の子が「お母さんが『焦げを食べると病気になる』って言った」から食べられない、と泣き出したんです。その時担任の先生がどう対応したのか、残念ながら覚えていません。ただ、私は、ン十年経った今も、この出来事が忘れられません。そして、子どもへの物事の伝え方は本当に難しい、と思うのです。


食に関して子どもに何をどう伝えるか、については、私が今とても関心があることです。これについては、またの機会に書こうと思います。


<みたらし団子の写真>

https://www.photo-ac.com/

ワタナベブログ

ドイツで思う食や栄養に関するギモンやフシギについて、ドイツ栄養アドバイザー・ワタナベと一緒に考えましょう。

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