夏休みが終わりました。今年、我が家は海のそばの、3食付の宿に止まりました。3食付です。ご飯を作らなくてもいい。買い物もしなくていい。誰かが作ってくれるご飯を食べられる幸せといったら・・・。
私は料理は嫌いではありません。でも、大好きでもない。それに、料理にまつわるいろいろ、例えば「買い物いかなきゃー」、だとか、「時間がない!」、だとか、そういうことをとても負担に感じます。だから、自分で何もやらなくてもご飯が食べられる環境というのは、とてもありがたい。夏休みなんだから、私も休ませていただきたいんです。せめて料理くらいは。
近所のママたちとの井戸端会議でそんな話をしたら、あるママ(ドイツ人)の一撃を食らいました。
ウチは絶対キッチン付のアパートに泊まるのよー。料理は私のリラックス法。料理したものを、みんなでゆっくり楽しく食べるの~
って。
・・・・ はぁ~っ。
ため息がでました。
こちとら家族のための料理が「義務」になっていて、苦痛に感じることも多い。それに、食事中は、「ちゃんと座って!」、「左手はどこいったのっ!」、「ご飯中に立ち上がらないっ!」とか叫びっぱなし。何だか戦いみたいで、みんなで楽しく食べる、などという感覚はほぼ無し。ましてや食事作りがリラックス法だなんて!
でも、冷静に考えてみると、わかります。これはドイツに、Abendbrotという食習慣があるからこその違いでしょう。
Agendbrot、直訳すると「夜のパン」。ドイツでは伝統的に、昼に温かい食事をとり、夜はパンにチーズ、ハム、野菜など、「温かくない」ものを食べます。調理はせず、食べるものを並べるだけですから、簡単です。
最近は、昼は仕事の合間にサンドイッチをパクつくだけ、という人も多く、だから夜は温かいものを食べたい、という声も聞きます。それでも日本の晩ご飯のように、ご飯にお味噌汁に、さらに○菜、という手間をかけたものではなく、比較的簡単でにできるパスタやスープなどが多いようです。
そして- 週末には料理をして、家族や友達とゆっくり食事を楽しむのが伝統的なスタイル。つまり、彼らにとって料理をするということは、忙しい日常に対して、友達や家族との時間を楽しむことができる、食事をゆっくり味わうことができる、という非日常の象徴であるわけです。
日本は違いますね。3食温かい食事をとる国では、まず単純に料理をする頻度が高い。それに加えて、栄養たっぷりのものを、彩りよく、主食は肉か魚を、ご飯には必ずお味噌汁を・・・なんてやっているから、料理は日常であり、義務であり、負担である、ということになるのです。
この観点から日本とドイツの料理レシピを比べてみると面白いです。
日常の食事作りに限れば、日本では最近、「時短」を訴えるものが多いですね。日々の食事作り、確かに負担を軽くしたいものです。
こんな感じです。「一品5分」、「メインが10分」、「素材ひとつで」、「一度に二品」、など。「作り置き」も同様です。
ドイツでも、かつては無かったであろう、温かい食事の「時短レシピ」を見ることがあります。
„Schnelle Rezepte: in 30 Minuten gibt’s Essen! “ 「30分で食べられる!」が売りのレシピたちです。また、同じサイトに “Schnelle Gerichte für den Feierabend“というレシピ集もありました。仕事から家に帰って来てから、さっと作って食べられるもの、という趣旨。パスタやスープ、リゾットなど、一皿で完結する食事です。こちらもやはり、調理時間は30分程度が多いようです。どれも、とてもおいしそうです。でも、一品につき「調理時間30分」は、日本では訴求ポイントにはならないでしょうね。
調理時間もそうですが、材料も比べてみると、日本の人が、短い調理時間で簡単、かつ満足できる食事を作るために工夫をしてきたことがよくわかります。日本のレシピには、出汁醤油やポン酢、ドレッシングなど、食事作りの行程を短くするための便利な調味料が登場します。ドイツのレシピでそれにあたるのはスープの素くらいでしょうか。
ドイツに住む日本の方の中には、ドイツ人のようにAbendbrotにすると、朝食と同じになってしまい物足りない、夜にはやはり温かいものを食べたい、という考える方が多いように感じます。また、食べるものを並べるだけのAbendbrotでは、簡単すぎて罪悪感がある方もいるようです。
でも、このドイツ風夕食、考えようによってはとても便利です。ご飯を作らなければならない、という義務感を感じなくていいし、すぐに準備できるので時間のことを考えなくてもいい。これだけで日々のストレスが一気に軽減します。パンに塗るスプレッドやハムやチーズも、いつも一緒ではつまらないけれど、いろいろ試してみると楽しいです。野菜はポリポリ食べられるように、いろいろなものを切って出せば彩りもいい。日本の食事と比べると、簡単過ぎてこれでいいのか・・・とも思いますが、いいんです。私たち、ドイツに住んでいるのですから!
どうしても温かいものが食べたい時は、一品だけ温かいものをつける。我が家は卵がよく登場します。目玉焼きやスクランブルエッグ。ゆで卵も。簡単過ぎる?いやいや、だって温かいではないですか!また、スープ(面倒なのはだめですよ。野菜をスープの素で煮て、ミキサーでがーっとやるだけ)を作ることができれば上等です。
パンにハム、チーズ、スープにスティック野菜。この食事、日本でやっていたら、ちょっと欧風でオシャレではないですか?SNS映え十分です。それに、脂肪分や糖分がそれほど多くないからか、食べ過ぎることがあまり無いからか、食後のお腹が軽いような気がします。そう考えると、Abendbrot、たまになら悪くないですよ。
<写真>
オレンジページ 2017年8月2日号
Brigitte http://www.brigitte.de/
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