イースター休暇が過ぎようとしています。
写真はとある家庭の、イースターの日曜日の朝食の一部。「しょっぱいもの」を集めてみました。
右端は"Osterschinken"といって、大きな塊のハムをパン生地で包んで焼いたもの。おいしいです。後はハムとソーセージ、スモークサーモン、チーズ。
この他にヒツジの形をしたケーキ"Osterlamm"や、砂糖や牛乳を入れて作る、イースト生地の甘めのパン"Hefekranz"など、甘いものもテーブルに並びます。ドイツの伝統的なイースターの食卓は、なかなか贅沢です。
イースターとはまったく関係が無いのですが、このタイミングで、タニタ食堂の秋田店が閉店するという記事を読みました。日本でも北の方の地域では塩分の多いものを食すること、またその影響で心臓や血管の病気が多いことが知られています。当の秋田県は、かつて脳血管の病気による死亡率が高かったことから、行政が早くから高血圧の調査や研究を始め、県民の食生活の改善に努めてきたそうです。県はタニタ食堂とも一緒に、体に良い食事をさらに啓蒙しようとしていたそうですが、秋田の方々には、タニタ食堂の塩分控えめメニューは物足りなかったのでしょう。開店当初は多かった客足も、最近は低迷していたそうです。
日本の北の地域の食文化について見聞きするといつも、ドイツの食習慣についても思いをめぐらすことになります。寒い地域である東北では伝統的に、野菜なども保存が効くよう塩漬けにするそうです。お漬物ですね。また、体のエネルギー源となる炭水化物(お米)も多く摂られ、「ご飯のお共」として塩辛いものが好まれることも、日本人としてはよく理解できるところです。
冬が寒いドイツでも同様に、肉などを塩漬けにして保存を可能にする習慣があります。ハムやソーセージの種類が多いのはそのためです。
ということは、ドイツ人の塩分の摂取量も、東北地方と同様に多いのではないのか? それとも、もっと多い?ドイツに暮らし、多かれ少なかれドイツ人と食文化を共有している私達としては、気になるところです。
ということで、日本とドイツの塩分摂取量を比べてみました。
まずは日本。厚生労働省が定める摂取目標量は、18歳以上の女性で一日に7.0g未満、男性で8.0g未満です。小さじ一杯の塩は6.0gです。
そして、実際の摂取量。厚生労働省『平成28年国民健康・栄養調査報告』*1によると、日本人の食塩摂取量(平均値)は、20歳以上の女性全体で9,2g、同じく20歳以上の男性全体で10.8gです。もっとも多いのは、女性の場合60~69歳の9.8g 男性の場合も同じく60~69歳の11.4gです。
食塩摂取量が多いであろうことは何となく予想していましたが、男女とも摂取目標量を2.0g以上もオーバーしているとは。
では、地域別に見るとどうでしょう。
20歳以上の女性の場合、食塩摂取量がもっとも多いのは長野県で一日の平均摂取量が10.1g。上記女性全体の平均をさらに1g上回っています。さらに福島県の9.9g、山形県の9.8g、青森県と千葉県の9.7gと続きます。秋田県は千葉県の次、9.6gです。
20歳以上の男性の場合、宮城県と福島県が11.9gでトップ。こちらも同様に、全国平均を約1gオーバーしています。続いて長野県の11.8g、福岡県の11.7g。その次が秋田県で11.6gです。
上位はやはり東北地方初め寒い地域が多いですね。世間で言われている通りです。
次にドイツです。DGE(Deutsche Gesellschaft für Ernährung)の調査によると、ドイツ人の食塩摂取量(中央値)は、18歳から79歳の女性で一日8.4g、もっとも摂取量が多いのは50歳から59歳で、一日9.2gです。18歳から79歳の男性の場合は10.0g、もっとも多いのは30歳から39歳で10.6gです。
ドイツの地域別のデータは見つからなかったのですが、日本と同じく、病気の分布に地域差があるのを見ると、食塩の摂取量を始め、栄養摂取状況にも地域によって特色があることが予想できます。
参照した値が、日本の場合は平均値、ドイツの場合は中央値と、直接詳細を比較はできませんが、大体の目安としましょう。
日本とドイツ、男女それぞれ全体の値を比較しても、日本は多いですね。特に女性は、日本の摂取量の方が随分と多い印象です。食塩摂取量についてはドイツ人の方が多いのではないか、と私は予想していたのですが、それに反する結果となりました。
塩分を摂り過ぎると、体の中の血液の量が増え、血管に負担をかけます。それが動脈硬化や心筋梗塞につながるのです。上記のように1g単位の話は何だかピンとこないものですが、この1.0gが私たちの体に及ぼす影響の大きさを、私たちは常に考えなければなりません。一日の摂取量が全国平均より0.数gだけ食塩の摂取が多い地域で、特定の病気が多いということが、その大切さを語っています。
淡白な白米によく合う、お醤油やお味噌で味付けしたおかずは、おいしいのですが確かに含まれる食塩は多め。ドボッといってしまいがちなソース、飲み干したいほどおいしいうどんやラーメンのスープにはかなりの量の塩が含まれています。ソースは控えめにかける、スープは残す、など、できそうなどころから減塩に取り組みたいものです。
ちなみに、DGEがドイツで推奨する一日の摂取目標は全体で6.0g未満。厚生労働省が掲げる日本の目標量と比べてもとても少なく、ドイツが将来の国民の健康をかなり不安視していることがわかります。
さらに世界全体でいくと、WHOが提唱する食塩摂取目標は、何と5.0g未満。上述したように、日本では女性の目標が7.0g未満、男性は8.0g未満です。WHOこの値から見て取れるのは、減塩が世界的にみても喫急の課題であることです。現在の日本人の食塩摂取量は、このWHOの目標のほぼ倍です。
減塩、とにかく始めた方がよさそうです。
<以下参考にしました>
*1 厚生労働省ホームページより
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h28-houkoku-03.pdf
(『平成28年国民健康・栄養調査報告』結果の概要)
*2 DGE (Deutsche Gesellschaft für Ernährung) ホームページより
https://www.dge.de/wissenschaft/weitere-publikationen/faqs/salz/#
("Ausgewählte Fragen und Antworten zu Speisesalz")
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