いちごの旬

いちごの旬は、春じゃなかったっけ!?

年末に日本に帰省して、スーパーの入り口辺りに盛り盛りと積まれた、いろいろなブランドのおいしそうないちごを見て、そう思いました。

いちごの旬は、確かに春(晩春から初夏)なんです。お菓子の世界では、春の足音が聞こえる頃に、「期間限定ストロベリーなんちゃら」がお目見えして、売り場がピンク色になりますよね。伝統的にはこの季節感(先取りですが)が正しいのですが、今や日本では年間を通していちごを入手することができますね。

ドイツでは、いちごを見ることのできる季節は限られています。いちごが売れに売れるであろう日本のクリスマスシーズンに、スーパーマーケットでいちごを見ることはありません。例年2月ごろに輸入物が出始め、5月になると国産がお目見えし、夏になると売り場から去っていく。毎年この繰り返しです。

同じいちごなのに、なぜこうも様子が違うのか。今までぼやーんとしか考えてこなかったこの違いを整理してみたいと思います。

いちごが出回る時期について、日本の場合。農林水産省が出している統計*1を簡単なグラフにしてみました。平成27年、東京市場のいちごの卸売数量です。数字はともかく、グラフの形を見ると、実際の旬ではない冬や初春にいちごが売られていることがわかります。ハウスで促成栽培されたものが多く出回っているということです。

そしてドイツ。こちらはシーズンカレンダー*2の抜粋です。ここでは野菜や果物の、1月(左端)から12月(右端)の流通量がざっくりグラフで表されています。赤枠内がいちごで、黄色は輸入いちご、赤斜線は国産いちごです。

ドイツのいちごの旬は初夏です。これを見ると、輸入いちごが3月ごろから増えて、国産は旬通りの5月から増え、6月がピークです。

比べてみると、面白いですね。日本とドイツ、グラフは違う動きをしています。ドイツで流通量が増える初夏から日本の流通量は減ってきて、日本で流通量の多い冬にはドイツでは微量が出ているだけです。

いちごは見た目もよく、おいしく、食べやすい果物ですから、ドイツでもハウス栽培を強化して旬以外にも出荷すれば売れるはず。しかし、ドイツの寒く、暗い時期にいちごを完熟させるには膨大なコストがかかる割に需要がそれほど見込めないので、参入しにくいとのこと*3。

それにドイツ人、食に関しては保守的なイメージがあります。輸入いちご関してもいろいろな意見があります。元来足が早く傷みやすいいちごが遠路はるばる運ばれてくるわけですから、それなりに改良された品種であり、また収穫から時間が経っている分、やはり栄養価も落ちています。また、運搬やそれに見合ったパッケージを採用することによる環境への影響などを問題視する傾向もあり、今のところ国産ものに軍配が上がっているように思います。

ただ、ドイツでも、スーパーでいちごを見る時期が少しずつ早まっているように感じます。今流通しているのはスペイン産とイタリア産。クリスマスマーケットでチョコがけのいちごを見かけますが、あれはモロッコやエジプト産だそうです*4。国産の冬いちごもあります。こちらも需要は大きくなっているようです。

ドイツももはや多国籍国家、食に関しても人々がいろいろな文化を持ち寄っているので、旬の時期以外の需要も高まってくるかもしれません。

でも、やはり旬の時期にいちご狩りに行って、獲ってすぐ食べるいちごのおいしさは格別ですよね。今の今まで土からの栄養を受けていたいちごをすぐに食べることができるわけですから、栄養の面から見ても最高ですし、販売用のパッケージも不要、環境にも優しいのです。

ドイツの国産いちごは上の写真のように、大きさも形もバラバラないちごが、収穫したまんま感満載で紙のパックに入っていることが多いです。これは、いちごが、乾燥や栄養(酸素や光に弱いビタミンC)の損失を防ぐためのフィルムや、搬送での痛みを考慮した梱包が必要にならない程の近場から来ているということです。

我が家では去年、Erdbeerbowl(いちごポンチ)が流行りました。半分くらいに切ったいちごにレモン汁と砂糖(量適当!)を振りかけてしばらく置くと水分が出てきます。トロッと甘くておいしいいちごシロップです。いちごとシロップをコップに入れて、お水を注ぎます。お水は、炭酸水ならシュワシュワと楽しい音がしますし、もちろん炭酸無しのお水でも。作るの簡単、見た目もきれい、おいしくて子どもも喜びます。いちごとシロップは、ヨーグルトやバニラアイス、チーズケーキにかけても。

あぁ、いちごの季節、待ち遠しいですね。


*1 農林水産省  平成27年度果実の主要消費地域別・産地別の卸売数量及び卸売価格(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/seika_orosi/index.html

*2 aid infodienst e.V. (http://www.aid.de/_data/file/saisonkalender_web_3488_2013.pdf

*3 SZ.de „Sehr groß sei die Nachfrage allerdings nicht. "Wenn wir in der Saison 30 bis 50 Tonnen pro Tag absetzen, sind es jetzt vielleicht eine bis drei Tonnen.“ “、 “Der Aufwand, Erdbeeren in der dunklen und kalten Jahreszeit zum Reifen zu bringen, ist beträchtlich. Der Stromverbrauch, vor allem für die künstliche Beleuchtung, ist enorm.“、“Obwohl es prinzipiell möglich wäre, hierzulande auch im Hochwinter, also im Januar und Februar, Erdbeeren zu kultivieren, rechnet sich der Aufwand irgendwann nicht mehr. “ (http://www.sueddeutsche.de/bayern/erdbeeren-aus-bayern-fragwuerdige-fruechtchen-1.1843421

*4 Apotheken Umschau “Von Februar bis Mai sind Früchte aus Spanien und Italien erhältlich. Um die Weihnachtszeit kann man Erdbeeren aus Marokko und Ägypten kaufen.“(http://www.apotheken-umschau.de/Erdbeere

ワタナベブログ

ドイツで思う食や栄養に関するギモンやフシギについて、ドイツ栄養アドバイザー・ワタナベと一緒に考えましょう。

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